今日はHowey Test(ハウェイテスト)について紹介します。正直いって「アメリカでビットコインを買う!」ためには必要のない知識ですが、アメリカで仮想通貨関連の訴訟のニュースが流れてきた時に理解しやすくなると思います。
法律やニュースに興味のない方は読み飛ばしてくださってOKです!
Howey Test(ハウェイテスト)とは?
Howeyテストは、1946年の米国最高裁判所の判決に由来し「証券(Security)」としての取引を定義するための法的な判断基準基準です(日本語表記だと「ハウェイテスト」となっているようですが、実際の発音は「ハウウェイ」に近いです。How Wayみたいな感じです)。米国証券取引委員会(SEC)が多くの仮想通貨のプロジェクトに対して訴訟を起こす時問題となるのが、その仮想通貨が「証券」に当たるかどうかであり、その判断のためにHowey Test(ハウェイテスト)が使われます。
Howey Test(ハウェイテスト)には、次の4つの要素が含まれます:
- 金銭の投資: この要素は、共同企業に対する金銭の投資を含みます。これは現金だけでなく、資産や企業への投資の対価として交換される仮想通貨なども含まれます。
トークンセールなどは、金銭を集めるので、この項目に当てはまります。しかし、特定のチェーンに参加したりタスクをこなすことによって得られるポイントなどの「ファーミング」「マイニング」そして、その後のトークンの「エアドロップ」などは当てはまらないと言われます。
- 利益の期待: 投資家は、投資から利益を期待しなければなりません。これらの利益は通常、企業の経営陣やプロモーターなどの他者の努力によって得られます。
- 共同企業: 投資家が得る利益は、共同企業から派生している必要があります。つまり、投資家の運命がプロジェクト全体の成功や失敗にリンクされているかどうかを判断します。
- 他者の努力: 第四の要素は、投資家の利益が主に他者の努力によって得られるかどうかです。つまり、投資家は利益を得るために、プロモーターやスポンサー、または第三者の経営や起業活動に依存していることを意味します。
取引がHowey Test(ハウェイテスト)の上記すべての要素を満たす場合、それは投資契約と見なされ、したがって米国の証券法の下で「証券」とされます。その結果、米国証券取引委員会(SEC)やその他の関連当局の規制の対象となります。Howey Test(ハウェイテスト)は、さまざまな種類の金融商品、特にICOを通じて提供される一部の仮想通貨やトークンが証券として認定されるかどうかを判断するために、裁判所や規制当局に広く使用されています。
Howey Test(ハウェイテスト)が使われた事件
ここではHowey Test(ハウェイテスト)が争点となったケースをいくつか紹介します。
SEC対Telegram
2019年、米国証券取引委員会(SEC)は、メッセージングアプリTelegramの企業であるTelegram Group Inc.に対して、同社の計画されていた仮想通貨プロジェクトである「Grams」が証券法に違反していると主張し、訴訟を提起しました。
SECは、TelegramがGramトークンのために実施した初期コインオファリング(ICO)が未登録の証券提供であると主張しました。SECは、トークンがHoweyテストの下で投資契約の基準を満たし、投資家がTelegramとその開発者の努力に基づいて利益を期待してそれらを購入していたと主張しました。
Telegramは、Gramトークンのプライベートセールを通じて世界中の投資家から約17億ドルを調達していました。しかし、SECはGramの発行を停止し、Telegramが調達した資金を投資家に返還するよう求めました。
2020年3月、連邦裁判所はSECに有利な判決を下し、Gramトークンの配布を停止する仮処分命令を発行しました。裁判所は、SECがTelegramのICOが未登録の証券提供を構成するという主張を実証する可能性が十分にあると認定しました。
SEC 対 Kikケース
2019年、SECはメッセージングアプリKikの企業であるKik Interactive Inc.に対して訴訟を提起し、同社のKinトークンのICOが証券法に違反していると主張しました。
SECは、KinトークンがHowey Test(ハウェイテスト)の下で証券の定義に該当すると主張しました。なぜなら、投資家はKinエコシステムを構築し拡張するKikの努力に基づいて利益を期待してそれを購入したからです。
Kikは、Kinトークンはユーティリティトークンであり、証券ではないと主張しました。Kikはサービスの提供を停止してまで、訴訟問題に注力しましたが、裁判所は2020年9月30日、SECの略式判決申し立てを認め、争いのない事実により、Kikによる「Kin」トークンの販売は投資契約の販売であり、したがって有価証券の販売であることが立証され、Kikは登録要件からの免除を受ける資格を有しない無登録の有価証券の募集を行った時点で連邦証券法に違反したと判断しました。 裁判所はさらに、Kikの非公開トークンセールスと公開トークンセールスは単一の統合された募集であると認定しました。
SEC 対 Rippleケース
2020年12月、SECは仮想通貨XRPの背後にある企業であるRipple Labs Inc.に対して訴訟を提起し、XRPの継続的な販売が未登録の証券オファリングを構成すると主張しました。
SECは、XRPがHoweyテストの下で証券の定義に該当すると主張しました。なぜなら、投資家はXRPエコシステムを開発し推進するリップル社の努力に基づいて利益を期待してそれを購入したからです。
リップル社は、XRPが通貨であり、証券ではないため、SECの規制の対象外であると主張しました。この事件は現在進行中でありリップル社は訴訟を取り下げる動議を提出しています。
Howey Test(ハウェイテスト)の限界 — ミームコインはOKで、真面目なプロジェクトはNG?
SECは、投資家と消費者を保護するためにHoweyテストを使って仮想通貨プロジェクトを規制しようとしているのですが、ここには皮肉な矛盾が存在します。
完全にジョークとして作られたドージコインやシバイヌコインなどのミームコインは無価値であることが宣言されており「他社の努力による利益の期待」などがないため、Howey Test(ハウェイテスト)に引っかからないのに対して、一定のユースケースのためにビジョンを持って創始者たちが価値を高めようと努力しているプロジェクトはHowey Test(ハウェイテスト)によって「証券」に当てはまりやすいのです。
これは投資家を保護するSECの目的と合致しているのでしょうか?仮想通貨プロジェクトが公正なものであることを保証し、投資家を保護したいのなら、情報公開や投機を規制するためのトークンのロックアップの義務化などを行うべきなのではないでしょうか?
Howey テストのまとめ
- Howeyテストは仮想通貨が「証券」に当たるかどうかを判断するための基準です
- Howeyテストは多くの判決で使われており、今後も米国内での仮想通貨サービスやトークン発行に影響を与える可能性があります
- Howey テストには問題も指摘されており、真に市民を保護するためには、違う視点からの規制の必要性も主張されています
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